フランソワトリュフォーの映画「夜霧の恋人たち」の日本版のポスターは数ある映画ポスターのなかでも印象的な図柄だ。パリが世界に誇るアイコンであるエッフェル塔が背景として使われている。確かにこの劇中の冒頭にエッフェル塔が登場するだけで終始舞台はパリにもかかわらずその後は出てこない。この映画はエッフェル塔よりも先にシネマテークフランセーズが登場する。登場時間もこちらのほうが長く先にあげた日本版ポスターも背景はシネマテークフランセーズでもよかったのではないかと思うほどだ。
何故エッフェル塔が登場するのは主人公アントワーヌが兵舎の留置場を出るところから始まるのだがその位置関係を説明するのにエッフェル塔を基点にカメラが留置場を捕らえる。ただの枕詞である。
一方のシネマテークフランセーズは説明的に使われるでもなくただ冒頭に登場する。最後まで映画を見終わって意味が見出せるでもない。映画史を紐解いて「夜霧の恋人たち」撮影中に起きた事件を思いださなければならない。
ときのシネマテーク館長ラングロワが政府によって突然解任されたことに端を発する事件のオマージュだ。トリュフォーからゴダール、リベット、レネなどカイデシネマの連中を中心にフランスの映画界関係者、果てにニコラスレイまでもが集い政府に抗議した一連の事柄だ。
ドキュメンタリーが「夜霧の恋人たち」のDVDに収録されている。カメラはネストールアルメンドロス。
そもそもラングロワが学生当時に始めたフィルムの収集からことから始まった。のみの市でがらくた同然に扱われていたフィルムを丹念に集めて上映することがトリュフォーやロメールやゴダールなど若かりし作家たちが歴史を学んだ。ヌーベルヴォーグという結晶を生み出す要因の一部となった。アンリラングロワが生みの親と目される所以だ。
現在は当時の場所ではなくパリのベルシー地区の公園のフランクゲーリーの作である旧アメリカンセンターに入っている。2007年秋フランスを襲った大規模なストライキの影響で予定がたたずにふらっと訪れたシネマテークではあるフランス人役者の展覧会が行われていた。ちらしによると展覧会にあわせてワークショップが行われるということであった。特別ゲストの欄に目をやるとエリックロメールの名前があった。ロメールによるラングロワへのインタビュー映像を思い出した。
公式サイトhttp://www.cinematheque.fr/fr/la-cinematheque-francaise.html
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