2007年12月9日日曜日

Berlin ジーゲスゾイレ


ジーゲスゾイレは1830年代からベルリンを天空から見守り続ける。
ベルリンは黄金色の天使の街だ。

天使の足元が展望台として解放されている現在土産物で手に入る歴史地図で東西ベルリンの線引きの位置を確認しながら眺めることもできる。この高さからなら今もなお壁が東西を隔ていたとしてもとるに足らない線にしか見えないだろう。真下を走る車は数百分の一の模型の車にしか見えない世界だ。同じように下界を見つめる天使にとってもやはり取るに足らないものであっただろう。
展望台からのビスタは360度開かれていてティーアガーテンから向こう側にポツダム広場にアレクサンダー広場にテレビ塔に旧帝国議会議事堂等々が視界に入ってくる。
「ベルリン天使の詩」が作られたのは東西の壁は現役だった80年代後半だ。監督のヴィムヴェンダースによるとジーゲスゾイレのみならずベルリンの至る所に存在する天使に着想を得たと言う。当初ロケは西側に留まらず東側でも撮影することで天使の所以を表現する企てであったが交渉の末実現しなかった。口悪く言えば「西ベルリン天使の詩」と言ってしまってもいい。劇中天使という超越的な存在を表現するのに二重露出が誰がたびたび使われている。カメラマンを勤めたアンリアルカンが事後のフィルム加工を拒んだためにという説明があったが当初の企て通り東側での撮影が実現していれば壁のこちらとあちらの往来を表現するのにも同じ手法が使われたことだろう。結局劇中天使は一部セットを組立て東西の中立地帯を天使が歩くシーンだけで東側には立ち入らない。
劇中のに登場するのはオットーザンダーにブルーノガンツら演じる人間と等身大の天使である。
そのせいか人間の行動を阻むように作られた壁を越えることはできなかったわけだ。実際ベルリン市街から眺める天使はまことに小さくみえる。しかし険しい階段を一気に駆け上がり黄金色の天使の足元まで近づいてみると大変な大きさと直ちにわかる。劇中このスケール感の天使が設定されていればきっと東西の壁など取るにたらないものだったろう。

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